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ファージディスプレイのライブラリを活用したモノクローナル抗体スクリーニングサービスを展開するジーンフロンティア株式会社の海老原博士にお話をお聞きしました。

 非常にユニークな抗体製作法ですが、由来はどちらですか?


海老原博士 ドイツのMorphoSys社のモノクローナル抗体作製サービスを日本のお客様に提供しています。MorphoSys社は1992年の設立当初から、抗体医薬を開発するために独自のヒト抗体ライブラリおよびファージディスプレイ技術を開発してきました。創業者の中にはこの分野で著名なDr. Andreas Pluckthunが入っています。現在では抗体医薬分野では著名な会社になってきました。2007年10月現在で、全世界の製薬企業売上順でTop20社のうち、13社がMorphoSys社と技術移転もしくは共同研究開発を実施しています。国内では塩野義製薬様、第一三共様、アステラス製薬様がこの技術を自社R&Dもしくは抗体医薬開発に活用しています。


 では、技術的な特徴をお話ください。


海老原博士 MorphoSys社の独自のヒト抗体ファージライブラリHuCALは、他の抗体ライブラリとまったく異なり、人工合成で作られています。どういうことかと申しますと、まず現在既知のヒト生殖細胞における抗体のマスター遺伝子配列と、そこから発生分化した後の多様なヒト抗体の配列・構造情報を分析し、ヒトの抗体でありうるべき配列のルールを見出しました。次に、このヒト抗体の配列ルールにのっとって抗体上で抗原と反応する領域Complementary Determining Region(CDR)を化学合成します。これら人工合成されたCDRを、ヒト抗体の95%をカバーする49種類のフレームワークに導入し、多様な抗体ライブラリを造り上げているのです。こうして出来上がった人工合成ヒト抗体ライブラリは150億種類の多様性を持っています。このように人工合成ですので、動物免疫やヒトの抹消血から抗体遺伝子を取ってくるような手法に比べて免疫寛容を経ていない、ナイーブなライブラリということがいえます。そのメリットは後に述べます。この多様な抗体ライブラリが各々ファージの表面に提示された形で、すでにバイアルの中にReady to Useで準備されています。このヒト抗体ファージライブラリのなかから、特定抗原に結合するものをアフィニティ選択によりスクリーニングしてきます。抗原に非常に強く結合しているファージももれなく回収するため、pHを変えるといった物理的な条件変化により抗原抗体反応を無理やり離すのではなく、化学反応によりファージを回収できるような工夫を加えています。これらの技術やこれまでに蓄積したノウハウを活かし、現在の抗体作製の成功率は90%以上という驚異的な数字を誇っています。

 90%以上は素晴らしいですね。私も何種類かポリクローナル抗体を作ったことがありますが、せいぜい60~70%でした。初心者が作るよりも、こういったサービスにお任せした方が良さそうですね。


 既存の動物を使った抗体作成法と比べ、メリット、デメリットをお話し下さい。


海老原博士 以下のポイントに注目ください。
・ 早い:動物免疫が半年くらいかかるところ、10週間でOK。
・ 免疫寛容を経ていないナイーブな抗体ライブラリ:動物免疫ではホモロジーが高くて抗原性を持たないような抗原でも抗体  作製が可能
・ 抗原の制限がない:タンパク、ペプチドはもちろん、ハプテンや、毒性のある抗原にも対応可能。
・ In vitroの系ならではの微小な差を見分ける抗体を選択可能:リン酸化修飾を見分ける、1量体と2量体を見分ける、配列の違いを見分けるといった抗体を選択的に得ることが出来る。


 なるほど、蛋白質の修飾はリン酸化、アセチル化、メチル化など複雑な連携が見出されてきていますが、今後さらにニーズが増して来そうですね。


海老原博士 蛋白質のスルホン化の実績もあります。マウスへの動物免疫で出来なかった抗体作製の依頼を受け、弊社のサービスでは抗体が得られたという実績があります。その案件では、酸化還元反応によるスルホン化修飾を見分けるというもので、微小な差を見分ける抗体という例の一つです。また、SNPに起因するタンパク質上の1アミノ酸置換を見分ける抗体作製の実績もあります。アプリケーションで見ても、FACSに使える抗体も取れています。



 ありがとうございました。今後もたくさんの特殊な抗体作りに活用されることが期待されます。益々のご発展を楽しみにしております。



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